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You ain't heard nothing yet!

Penseur

2016.10.06

魚か

食欲の秋。スポーツの秋。芸術の秋。
秋にも色々ありますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

今回は芸術の秋に因んで、(少し)映画のお話をしたいと思います。
洋画に関して言えば字幕派か吹替派かという、長きにわたる命題がありますが
いずれにせよ必要になるのが「翻訳」という作業。
この翻訳、ぼ~っと日本語訳だけを追いかけていると気付かないのですが
同じ原語でも翻訳者によって全然違ったりします。
確実に個性があります。

個人的に印象深いのが「ジャズ・シンガー」という映画。
1927年10月6日にアメリカ合衆国のワーナー・ブラザーズが公開し、
ヴァイタフォン方式による「世界初」のトーキー(音声付き)映画です。

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この映画に出てくる有名な台詞が本ブログのタイトル、
つまり、世界で初めて映画で発声された台詞です。
かなり乱暴に要約すると、ジャズシンガーがナイトクラブで1曲歌って拍手喝采を浴びる。
それを制して2曲目を歌いだす・・・その時の台詞が「You ain't heard nothing yet!」

直訳すれば「君たちははまだ何も聞いていない」ぐらいな感じですが
実際の訳は「お楽しみはこれからだ‼

いや~、お洒落でセンス抜群ですね。
未来に対して希望をもつというメンタリティーもさることながら
文脈や背景や事情などを包括的に勘案した総合力の妙だと思います。

広告の仕事も本質的な部分では、この翻訳という作業に似ているなと感じています。
企業のメッセージをユーザーに届ける。
ユーザーのニーズを企業に共有する。
扱うメディアや手法はその時々の最適解を模索する必要がありますが
それぞれ立場の違う両者の意向を翻訳するという役割において
直訳ではない、本質を捉えた意訳が潤滑な意思疎通の肝になると思うのです。

1+1=2だと普通ですし面白くないですよね。文法通りの直訳です。
1+1=3だからこそ広告の値打ちがあるのではないでしょうか。
上手に意訳するということが、そういう仕事をします。
そういう「翻訳者」になりたいなと考えながら日々奮闘しているつもりなのですが・・・
理想と現実のギャップを埋めるべく、お楽しみはこれからです。

秋の夜長に映画をご覧になる時、翻訳についても着目してみて下さい。
今までとは違う角度からの楽しみが増えると思います。